憧れと魔法
Chiquewaはこのアルバムを通して何を伝えたかったのだろうか。
Chiquewa、そして、ぱんだっちは音楽のプロフェッショナルであり、膨大な時間を音楽と共に過ごしてきた音楽人だ。
本作はビッグバンドジャズという、ボーカロイド界では滅多に見ることの出来ないジャンルに挑戦していると同時に、様々な過去の作品の影響も色濃く受けているように思える。デューク・エリントン、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、バディ・リッチ、ビリー・ストレイホーン、スティービー・ワンダー、カウント・ベイシー、渡辺マリ等々それは枚挙に暇がない。その、そこかしこに散りばめられた”ネタ”から伺える、音楽人としてのボキャブラリーの多さにはもう敬服を覚える他は無い。
それ故に、このアルバムはぜひとも若い音楽ファンに手に取って貰いたい。これらの楽曲から様々な音楽の文化を感じ、源流に踏み込む道標にして頂きたいと願うばかりだ。
そして本作は、アルバムアートワークが素晴らしい。リスナーがアルバム作品に対して最初に接触するのがアルバムアートワークであり、作品全体の印象はこれによって大きく進路を変えると言っても良いだろう。
やはり、多くのリスナーは”巡音ルカ”に強い関心があってこのアルバムを手にしていると思う。そういった人々とChiquewaの音楽を繋げる重要な役割を、素晴らしい仕事で実現したちぃの仕事には賞賛を送りたいと思うのだ。
率直に言うと、筆者はChiquewaに、そしてぱんだっちに憧れているのだ。もしも、自分がギターを弾き続けていたら、Chiqeuwaの様なギターを弾けただろうか。もしも、自分がドラムを叩き続けていたら、ぱんだっちの様にドラムが叩けただろうか。その演奏が出来ると言うことは、どんな世界が見えているのだろうか。
どんな道でもそれを極めようとする事は困難と苦痛を伴う。そんな事は解りきっている。でも知りたいのだ。
その景色は、美しいですか?
その答えを、もしも、このアルバムから少しでも垣間見る事が出来るのならば、そんな幸運な事は無い。そう、この作品を見つけた私達は、チャンスに恵まれたのだ。このチャンスを逃す手は、無い。
憧れ、夢見る力。それこそが世の中に唯一自分だけが持ち得る”魔法”だ。
私が観た空想のコンサートは私だけの物かも知れないが、そこに一緒に居たオーディエンスの一人一人は同じようにアルバムを手にしたリスナー一人一人に他ならない。あなたは私が観た空想と同じ場所でどんな夢を見ているのか。機会があれば、ぜひ教えて欲しい。
さあ、あなたも一緒にChiquewaの音楽を聴いて、君だけの魔法に掛かってみないか。
そしてそこで、一生忘れられない出会いが生まれたなのなら、どんなに素晴らしい事だろう。
作品情報
アーティスト
- プロデューサー:Sasakama Studio
- 作詞曲・編曲、ギター、ピアノ、プログラミング:Chiquewa
- 作詞曲・編曲、ドラムス、パーカッション:ぱんだっち
- ジャケットイラスト:ちぃ(0108 -音屋-)
収録曲
- 深紅の薔薇にくちづけを feat.巡音ルカV4x
- 君だけの魔法 feat.巡音ルカV4x
- 北山ムーンライト feat.巡音ルカV4x
- Strayhorn’s Sentimental Rag feat.巡音ルカV4x
- Catch me feat.巡音ルカV4x
- 恋するモダンガール feat.巡音ルカV4x
- Sing For You feat.巡音ルカV4x
- ハッピィデイズ feat.巡音ルカV4x
コメント
紹介文のひとつひとつに作品への愛が詰まった素敵なレビューだなと思いました。じっくりと曲を聴きながら読ませていただきました。ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
曲を聴く切っ掛けになれた事が何より嬉しいです。